【完】花嫁修業のため、幼なじみと極甘♡同居が始まります
さっきとは打って変わって、穏やかな声にパッと顔を上げる。
「むしろ、謝るのはわたしの方だ。大切な幼なじみを罵倒するような言い方をしてしまったね。すまなかった……」
理人先輩のお父様はそう言って眉を下げた。
「圭吾のことだろうからもしかしてと予感はしていたのだよ。一方的な婚約話なんじゃないだろうかってね。だが歌鈴ちゃんの口から本心が聞けてよかった。もう行きなさい」
「で、ですが……」
俯きがちの理人先輩をチラリと見る。
「理人。男が下を向いていいのは、人様に謝る時だけだと教えただろう」
それでも、理人先輩はこっちを見なかった。
「すまないね。今日のところはこれで勘弁してやってくれるかい?」
「はい……今日は時間を作ってくださって、ありがとうございました」
「わたしからも礼を言わせてもらいたい。ありがとう。真っ直ぐなその目は、圭吾にとてもよく似ているね」
言葉を失っている理人先輩と、眉を下げたお父様に一礼をして、私は部屋を後にした。