Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 そして、ある日宗太は急に教室に来なくなった。
 結局、わたしたちが一緒に通っていたのは、ほんの3カ月ほどだった。
 
「教室をやめたのは、父が亡くなって祖父の家で暮らすようになったからだよ。それからは芹澤家にふさわしい男になるように猛特訓さ。食べ放題だったお菓子は一切禁止。勉強も体操もマンツーマンのスパルタ指導でね。あっという間に30キロやせたんだ」

「そうだったんですね。でもそれなら、どうして最初から名乗ってくれなかったんですか」

 そう。話してくれていれば、あんなにうじうじ悩むこともなかったのに。

「ああ。そうだよね、ごめん。でも……」
 彼は手を伸ばして、わたしの手を取り、まるで壊れ物を扱うように、そっと両手で包み込んだ。

「外見とか家柄とかそういうものじゃない、ぼくの内面をよく知ってもらってから……」
 わたしを見つめる彼の瞳が輝きを増す。

「その上でぼくを選んで欲しかったんだ」
 そして、わたしの手にそっと口づけて囁いた。
「ちゃんと恋がしたかったんだよ。エリカ、きみと」
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