Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 そのとき、神谷先生も口を開いた。
「わたくしも彼女には太鼓判を押しますよ」

 宗太さんのお母さんが驚いた声をあげた。
「まあ、あなたが人をお褒めになるなんて、珍しいこと」
 わたしもびっくりして神谷先生を見つめた。

「期間も短かったのでね。ずいぶん無理難題を吹っかけたけれど、この人はいつでも食らいついてきてくれましてね。今どき珍しい性根の坐ったお嬢さんですよ」

 この2カ月一度も褒めてくれなかった先生が。
 いつも厳しい顔をして、にこりともしてくれなかった先生が。
 これまでの苦労が、一気に報われた瞬間だった。

 ぴんと張りつめていた心の糸が緩むと同時に、涙がこぼれてきてしまい、わたしは急いでバッグからハンカチを取り出した。

「まあ、エリカさん、泣いていらっしゃるの?」
「おふたりに……そんなふうに褒めていただけて……とても嬉しくて」

 宗太さんがわたしの肩をぽんぽんと叩いた。
「ぼくがどんな言葉をかけても涙なんか見せたことないのに」
 ちょっとすねた表情を作って、文句をつける。

「だって……」
 わたしたちのやり取りをにこやかに眺めていた篠崎先生が、急に真顔になって宗太さんのお母さんに話しかけた。
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