Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 その日の午後は、ドレスを発注していたメゾンへ向かった。
 仮縫いが仕上がったと、連絡を受けていた。

「ついでにウェディング・ドレスの発注もしとこうか」
 運転席の宗太さんは軽やかに言った。

 そういえば、あの日はウェディング・ドレスならいいのにと思っていたっけ。
 そう思うと嬉しさがこみあげてくる。
 でも、同時に不安もよぎる。
 あまりにも話が早く進んでいくので、正直まだ気持ちが追いついていなかった。

 本当にできるのだろうか。
 宗太さんとの結婚、なんて。

「はい……そうですね」

 わたしの返答に惑いを感じたらしく、宗太さんはハンドルを握っていない手でわたしの腕に軽く触れた。

「どうしたの? なんか浮かない口調だね」

「そんなことはないですけど、でも宗太さんと結婚なんて、まだ夢を見ているようで、まるで実感がわかなくて」

 彼は声を立てて笑った。
「決まったばかりのときは、誰でもそう思うんじゃないかな。これから準備を重ねていくうちに実感していくんじゃない?」

「そうですよね。変なこと言ってごめんなさい」

 宗太さんの言うとおりかとも思う。
 それでも正体不明のもやもやは消えない。
 マリッジ・ブルーには、まだちょっと早すぎるような気がするけれど。
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