Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 パーティーは歓談の時間に入っていた。
 湊さんが会場前の受付係に用事を言いつけ、席を外させた。

 誰もいなくなったところで、合図をもらう。
 わたしは湊さんのそばまで行き、心を落ち着けるために深呼吸をした。

「ご歓談中、恐縮ですが」
 扉の向こうから宗太さんの声が聞こえてきた。

 いよいよ……
 談笑していた人たちの声がやむ。

「私事で誠に相済みませんが、この場をお借りして、ご列席の皆様にわたくしの婚約者を紹介いたします」

 会場がざわつく。
 しおどきを見計らって、湊さんが扉を開けた。

 金屏風を立てまわした演壇に立つ宗太さんがわたしの姿を認めて、軽く手をあげる。

 会場中の注目が、一斉にわたしに集まる。
 宗太さんまでの距離は、ほんの5メートルほど。

 たったそれだけなのに、どれだけ歩いても行きつけないと思うほど、遠く感じた。
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