Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略

「婚約者の田中壱子です。このたび縁あって婚約する運びと相成りました。今後はわたくしともども、お引き立ていただきますようによろしくお願いいたします」

　宗太さんに促されて、今度はわたしがマイクの前に立った。

「田中壱子と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます」

　顔を上げると、みんな一様に、この女は誰だと怪訝な顔をしている。
　どこのお嬢さんだ、見たことがない顔ね、と囁く声が聞こえてくる。

　ビビってはだめ。
　そう、自分に言い聞かせる。

　好奇に満ちた２千の瞳を跳ね返すつもりで、わたしは婉然と微笑んだ。

　そして、いにしえの貴族の令嬢のように、できるかぎり優雅にお辞儀をした。

　ほーっというため息がさざ波のように広がっていく。