Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 それからの数日間は、不思議なほど静かに日が過ぎていった。

 芹澤会長がまた入院されることになり、親戚も会社の人もわたしたちの結婚どころではなくなったのがその理由だった。

 でも、それは、言うなれば、嵐の前の静けさだった。

***

 パーティーから1週間が経った金曜日。
 宗太さんが、今度はシンガポールに出張することになった。

 帰るのは3日後。

 出張前夜、ベッドでわたしの髪を弄びながら、宗太さんは言った。

「一緒に行かないか。エリカと3日も離れるのは辛いよ」

「わたしも離れたくないですけど。でも、公私の区別はきちんとしないと」

 ただでさえ、お母様以外のご家族に最悪の印象を持たれているわたしだ。
 さすがにこれ以上、自分勝手で図々しい女と思われたくない。

 翌朝、名残惜しげに口づけしながらも、宗太さんは出かけていった。

 そして彼が発った次の日の午後。 

 宗太さんのお母さんから「これから来てもらえるかしら」と電話がかかってきた。

 なんだろう。
 嫌な予感がした。
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