Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「わたしたちだけでいくら話しても、埒があかないでしょう」

 お母さんの言葉に、叔父さん夫妻はしぶしぶ宗太さんが帰るまで保留にすることを了承した。

 そして「荷物をまとめておくんだな」と捨て台詞を残して出ていった。

「ご迷惑をおかけしてすみません……」
 頭を下げるわたしをお母さんは制した。

「あのくらい、わたしは何とも思ってないわ。お仕事なんだし。あなたがいい子だってことは、ちゃんとわかっているから。だからあまり心配しすぎないでね。なんとかうまく行くように考えてみるから」

「ありがとうございます」
 その優しさが身に染みた。
 
 けれど、部屋に戻ってひとりになると、ボディーブローのように、じわりとショックが襲ってきた。

 何もする気が起きずに、茫然とソファーに坐りこんだ。

 お母さんはあのように言ってくれたけれど、もう無理だろう。
 結婚が許されるとは、到底思えない。

 どのぐらい、そこにそうしていたのだろう。
 気づくと辺りは暗くなっていた。

 窓際に立ち、高速を走る自動車のライトの列をぼんやりと眺める。

 その上空を、航空灯を点滅させながらジェット機が飛んでいく。

 ――新婚旅行、どこに行きたい?
 宗太さんの声が脳裏によみがえる。
 今となっては、遠い昔の記憶のように思えた。
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