Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 はじめからわかっていた。
 覚めない夢なんて、この世に存在しないことは。

 所詮、宗太さんとの結婚は、夢でしかなかった。

 そう。
 シンデレラの魔法が午前0時で解けたように、わたしの魔法も、もう解けた。
 そういうことだ。

 ここを出ていかなければ。
 彼の顔を見たら、離れられなくなるに決まっている。
 そこまで、わたしも強くない。

 自分の部屋に戻り、荷造りをはじめた。
 あっという間に終わった。
 わたしが持ってきた物は、ほんのわずかしかなかったから。

 そして、『さようなら。お世話になりました』と、一言だけメモを残し、その上に臙脂色の指輪ケースを乗せた。

 だけど……
 どうしても手放せないものがひとつだけあった。

 それは、あのガーネットのチョーカー。
 これだけは、どうしても手元に持っておきたかった。
 
 石の効力の話は、やっぱりただの迷信だったけれど。
< 138 / 153 >

この作品をシェア

pagetop