Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
*宗太サイド*

 母から電話をもらい、すぐエリカに連絡した。
 こっちの仕事を切り上げて、すぐにでも帰国するつもりだった。
 でも、仕事を優先しなくてはいけないとエリカに諫められ、出張の予定をすべて終え、2日後、帰路についた。

 早く、エリカをこの手に抱きしめたい。
 そして、安心させてやりたい。
 
 でも、自宅でぼくを待っていたのは、簡単な置き手紙と婚約指輪だけだった。

『さようなら。お世話になりました』
 ぼくはメモを握りつぶした。
 
 あのエリカのことだ。
 結婚を反対されて、ぼくが家を出ると言い出すことを恐れたんだろう。

 バカだよ。
 もう、ぼくたちは離れて生きてなんていけないのに。

 すぐに連れ戻さなければ。
 スマホを手にして、湊に車の用意をさせようとした、ちょうどそのとき母から電話がかかった。

『宗太、すぐ来てちょうだい。お父様が危篤なのよ』

*** 

 病院でも合間を見て、エリカのスマホに連絡したけれど、電源は切れたまま。

 湊も不在で行く先しれず。

 この場を離れるわけにもいかず。
 病室の前の椅子に座って、ぼくは頭を抱えた。

 八方ふさがりだった。

 エレベーターの扉が開き、叔父が降りてきた。

「あの女は?」
「……出て行ったよ」
「は、随分、ふてぶてしい女だったが、さすがにあきらめたか。お前、女を見る目がなかったんだよ。これに懲りたらもう勝手なことはするな。いいな」

 ぼくは何も言わず、叔父をにらみつけた。
「なんだ、その目は」

「もう、ふたりとも。ここは病院なのよ。やめてちょうだい」
 病室から出てきた母が間に入った。 

「先生からお話があるそうなの」
 叔父とぼくは顔を見合わせ、それから病室に急いだ。
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