Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 へっ?
 え、ええっ、 恋人⁉︎
 なんで???

 なんで、見ず知らずのイケメン大王にいきなり求愛されるの?

 ど、どゆこと⁉

 わたしは思わずコーヒーを吹き出しそうになり、あわてて飲みこんだ。

 驚きに目を白黒させているわたしを面白そうな顔をして眺めながら

「もちろん、恋人といっても、〝フリ〟をしてほしいって話ですがね」

「そ、そりゃ、そうですよね。ああ、びっくりした」
 わたしはもう一度コーヒーを口にした。
 なんだか、やたらと喉が乾く。

「もう少し詳しい事情をお話したいのですが……よろしければ自宅のほうまでご足労願えますか。ここでは話しづらいので」

「はい、もちろん構いませんけど」
 いや、そりゃ行きますって。

 ここで詳細を聞かずに帰ったら、楽しみに観てきた連続ドラマの最終回だけを見逃すようなものだし。

 ただ、心のなかでは、いくらなんでも無理な話だと思っていた。

 この人とわたしでは、あまりにも住む世界が違いすぎる。

 まさしく月とスッポン。
 そんな人と、いくら〝フリ〟とはいえ恋人なんて。

 無理無理。
 ぜったい無理。

 大金のギャラをあてにしていた酒井さんの落胆した顔が目に浮かぶけど……
 どう考えても無茶な話でしょう、これは。

 芹澤さんはデスクに戻り、内線をかけた。
「これから、自宅に戻る。そのあと、直接、空港に行くから、車の用意をしておいてくれ」

 受話器を置き、デスクの上のラップトップをビジネスバッグにしまい、
「じゃあ、行きましょうか」とにっこり微笑んだ。
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