Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 ふたりがやたらと盛り上がっているので、ちょっと気になって、後ろからその雑誌を覗きこんだ。

 ものすごく値のはりそうなスーツに身を包んだ若い男性が、東京タワーを臨む窓を背に重厚な木製のデスクの向こうで品のいい微笑みを浮かべている。

 うん。確かに万人が認めるイケメンぶり。
 金も地位もあって、その上、顔までいいなんて、世の中にはそんな人もいるんだ。

 でもタイプじゃないと言うか、高嶺の花すぎて、なんの興味が湧いてこない。

 ベリーヒルズビレッジねえ。

 最近、テレビのワイドショーはその話題で持ちきりだから、もちろん、その存在は知っている。

 ホテルと商業施設をあわせもつオフィスビル、数千人規模の会議が可能な国際会議場、超高級レジデンス、セレブや芸能人御用達の病院も備えた、最先端でハイクラスな理想都市だ。

 でも、明らかに〝下々の者〟に属するわたしには、まったく縁のない世界。

 この子たちみたいに、金持ちのパパを捕まえようという気力もない。

 そんなことを思いながら、ふたりに声をかけた。

「おはよう」
「あっ、エリカさんだ。おはようございます」
 揃ってひょこっと頭を下げた。
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