Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 レジデンスの裏口には、さっき乗ってきた車が横づけされていた。ハンドルを握るのは、やはり強面の湊さん。

「先に彼女をお送りして、それから羽田に回ってくれ」
「わかりました」

 芹澤さんは助手席、わたしは後部座席に坐った。

 車窓から外の景色を眺めつつ、わたしは、今、はっきり断るべきかどうか迷っていた。

 断るにはおいしすぎる話であることは確かだけど。

 2カ月間、この超ド級イケメンとルームシェアするという内容も、そしてもちろん、高額のギャラも。

 それでも、初めからできないと分かっていることを引き受けるのは、依頼主に対して不誠実な話だ。

 こういう考え方を〝融通が利かない〟って言うんだろう。
 もう少し利己的な考え方ができれば、世渡りもうまく行くんだろう。

 でも、仕方がない。
 これがわたしの性分だから。
 自分を曲げることは、わたしのなかで最も忌むべきことだ。

 うん、やっぱり断ろう。
 わたしがこの超絶イケメンセレブ副社長の婚約者になりきるなんて、どう考えても無理。

 よし。
 芹澤さんに声をかけようとしたちょうどそのとき、彼のほうが先に振り向いた。
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