Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 口に含むと、イチゴのほのかな酸味が広がり、噛むとミルクの味がする。
 昔とまったく変わらない。
 懐かしさにほっこりする。
「おいしい」
 その言葉を聞いて、芹澤さんは子どものような、無防備な顔で微笑んだ。
 あれっ?
 彼の笑顔、なんだか懐かしい気がするんだけど……また、〝デジャヴ〟?
 それとも、前に会ったことがあるとか。
 バイト先かな。
 記憶を辿ってみたけれど、思い当たるふしはない。
 まあ、おおかた気のせいだろう。
 あの店は大企業の副社長が来るような店じゃないし。
 
 甘いキャンディを舐めていたら、断る気が失せてしまった。
 それに……
 子どもみたいな笑顔のエグゼクティブか。
 つくづく不思議な魅力の持ち主。
 今、断れば、もう2度とこの人と会う機会はなくなる……よね。
 うーん。それはちょっと惜しい気がする。
 今はまだ返事をしないでおこうかな。
 せめてもう一度だけ、彼に会う機会を設けさせてもらっても、バチは当たらないだろう。
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