Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「ぶっちゃけ、この仕事のギャラが入れば、借金帳消しにできるんですか?」

 酒井さんは真面目な顔になった。
「全部ってわけじゃないけど、ものすごく助かることは確か。でも、来栖がどうしても嫌なら断ってくれよ。大事なタレントに無理じいするほど、落ちぶれちゃいないよ」

 そういうと、酒井さんは胸ポケットから煙草を出して咥え、火をつけて深く吸い込んだ。

 もう、そういうとこなんだよ。
 酒井さんのずるいところは。
 強く命じられたら、こっちも反発できるのに。

 わたしの立場を考えてるようなことを言われたら、逆に助けたくなっちゃじゃない。

 そういう性格だと、とっくに見抜かれていて、うまく操られているのかもしれないけど。

 そっか。そんな苦境に立っているとは知らなかった。
 ……わたしが引き受けることで、これまで散々お世話をかけてきた事務所の助けになるのなら。

 うーん。
 そのとき、頭のなかに、風船をガスでふくらませたように、ブワッと芹澤さんの笑顔が浮かんだ。

 そうだよな。
 何も妖怪ジジイのところに行くわけじゃなし……

 待っているのは、麗しの貴公子みたいな、あの人だし……
 しかもベリーヒルズの豪邸でルームシェアだし……
 えい、やってみるか。
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