Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「リビングもキッチンも自由に使ってもらってかまわないよ。あっ、それから」
 そう言って、廊下に出ると、次に案内してくれたのはバスルーム。

 と言っても、そんじょそこらのユニット・バスとは訳が違う。

 広い窓のある開放的な空間の真ん中に鎮座しているのは、フィットネス・クラブにあるような円形の大型ジェットバスだ。

 まだ昼日中だというのに、満々とお湯がたたえられている。
「24時間入れるようになってるから、いつでも使って」

 もう、至れり尽くせりで、貧乏性のわたしは落ち着かない気分になってくる。

「何から何までご用意いただいて、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいで」

 恐縮するわたしを芹澤さんは諭した。
「申し訳なく思う必要はまったくないよ。良い仕事をしてもらうために環境を整えるのは当然のことだからね」

 その言葉にハッとした。
 そう、仕事。
 わたしはここにバカンスに来ている訳じゃない。

 部屋や設備の豪華さに浮かれて、自分の本分を忘れるところだった。
 でも、これに見合う結果が残せるのか。

 わたしの心のなかで、また不安が顔を覗かせた。
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