Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「そういうわけで、きみのための出費は、まあ、保険みたいなものなんだ。だからプレッシャーを感じる必要はまったくないんだよ」

 芹澤さんの表情が期待に輝く。
「もう、やめるなんて言わないよね?」

 でも、わたしは即座に否定した。
「いえ、それとこれとは話が別です。自信がないのは本当のことなので」
 彼はちょっと眉を寄せ、右手で顎をさすった。

「じゃあ、ぼくがどうしてこんなことを計画したか、もう少し詳しい話をさせてもらえないかな。その上で、断るというのなら仕方がない。きっぱりあきらめるから」

「わかりました。それなら」
「ありがとう」
 芹澤さんはほっとした笑顔を浮かべた。

「ぼくはね。会社で必要とされていない人間なんだ」
 そう話を切り出した彼は、自嘲気味に顔を歪めた。

「副社長だなんて持ち上げられているけど、実態はただの祖父と叔父の傀儡《かいらい》でね」
「かいらい?」
「操り人形ってことだよ」
 芹澤さんは一瞬、苦い薬を飲んだような顔をした。

 それから残っていたワインを一気に空け、手の甲で口を拭った。

 その仕草にも、つい、ドキっとしてしまう。
 こら、不謹慎だぞ、と心のなかで自分を叱った。
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