Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「今のところ、ぼくの会社での役割は、スポークスマンとして世間の注目を集めることと接待だけ。つまり、実力じゃなくて、ぼくの外見が重用されてるんだ。いわば、ホストみたいなもんだよ」

「そんなこと……」
 否定しようとしたわたしの言葉に、彼は首をふった。
「とにかく、グループ会議で発言したところで、ほとんど取り上げられもしない。もちろん社員たちは『副社長』と言って立ててくれるけど、腹の底ではおもしろくないはずだよ。一族の人間というだけで、こんな若造がふさわしくない地位についているって」

 言葉の端々にやりきれなさが滲んでいた。
 
 そうか。
 地位や財産や容姿に恵まれたこの人だからこその苦労というのもあるのか。

 周囲に認められない立場というのは、確かにつらい。

 タレント業を始めてから、誰からも認められてこなかったわたしにも、その気持ち、よくわかる。

「だから、今回の政略結婚を阻止することは、祖父と叔父に対するぼくの〝反抗の狼煙《のろし》〟という意味もあるんだ。もうこれ以上、あなたたちの言うことを聞くだけの存在ではない、と」

 芹澤さんの目に力が宿る。
「今の地位にふさわしい力をつけて、その上で会社を改革していきたいと思ってるんだ。それには、今回の政治家の娘との結婚は、将来、ぼくにとっても会社にとっても、絶対に障害になると思うんだよ」
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