Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「あの、話がまったく見えないんですけど」
「そりゃそうだよね。おれもさ、詳しくことはよくわかんないんだけどさ」
「えっ、詳細も聞かずに話を受けたんですか?」

 なかば呆れてため息をつく。

 酒井さんは頭をかきながら、
「先方がどうしても来栖ちゃんをって、ご指名なのよ」
「本当にわたしですか? 栗田まみじゃなくて?」

  栗田まみはこの事務所の稼ぎ頭のグラドル。

「いや、まみを2カ月も押さえられちゃったら、事務所、完全に干上がるし。それにほら、きみの名前書いてあるでしょ。ここに。ちゃんと」

 酒井さんは封筒から書類を出した。
 本当だ。来栖エリカ。間違いない。

 えっ、それに何、このギャラ。
 『金10,000,000.也』って?
 これ、間違ってない? 1桁、いや、2桁ゼロが多いと思うけど。

「こんなに?」
「うん。今回は特別6:4にするよ。3年分ぐらいになるんじゃないの? いつものギャラの」

 2カ月余りで……400万! 完全に年収超え。

 なるほど。酒井さんがこんなわけのわからない仕事を受けた理由が、これでわかった。

 有り体に言えば、金に釣られたってことか。

「あの……まさかとは思いますけど、枕営業とかあやしい会員制クラブとかじゃないですよね」

「いや、大丈夫。それはない。そこはちゃんと確認済み。信頼できる筋からの話だしさ。それにそっちだったら、きみじゃなくて別の子に話がいくんじゃないかな。例えば……あの子たちとか」

 酒井さんはそう言って、飽きずにしゃべりつづけているリサと絢奈のほうを見た。
 うーん。なんか今、さりげなくディスられたような気がしないでもないけど。
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