Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「あの……本当にわたしでいいんですか?」

 芹澤さんはすばやく視線を向けた。
「もちろん。あの日、きみが副社長室に入ってきた瞬間から、この人ならいけるって確信してたんだ。だいたい、きみは自分を過少評価しすぎている。ほんの少し磨けば、どんな女性にも引けを取らないよ。ぼくが保証する」

 うーん。
 そこまで言われてしっぽを巻いて逃げ出したら、女がすたるか。
 よし。

「わかりました。そこまでおっしゃるなら。乗りかかった舟です。最大限努力してみます」

 芹澤さんは嬉しそうな顔で頷いた。
「でも、うまく行かなくても、文句はなしですよ」
「行かないはずないさ、きみなら」

 芹澤さんはわたしに右手を差し伸べた。
「よろしく」
 わたしも、もう一切ためらうことなく、彼の手を握った。
「こちらこそ」

 自分でもつくづく単純な性格だと呆れるけど、もう迷いは吹っ切れていた。
 話を聞くうちに、おこがましいけど、ある意味、彼を同志だと感じるようになっていた。

 ふたりとも、思い通りにいかない現状にもがいているところが。

 もちろん、彼の悩みとわたしの悩みは、まったくレベルが違う。

 けれど、住んでいる世界が違うからと、わたしが勝手に築いていた見えない壁は取り払われた気がした。
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