Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 姿勢や歩き方、そしてテーブルマナーを教えていただくのは、元CAの篠崎先生。

 現在はマナー・スクールの代表をされているそうだ。白いスーツ姿で首元に発色の美しいスカーフを巻いた、とても華やかな装いをされている。

 もうおひとりの神谷先生は、裏千家の師範で、行儀作法と茶華道と着付けを教えていただく。

 篠崎先生とは対照的に、藍色の着物に白地の桜紋の帯をしめ、グレーヘアをひとつにまとめた渋い装い。

「実は、お二方とも、このレジデンスにお住まいなんだ。それもあって、きみに住み込んでもらうことにしたんだよ」

「そういう訳なんですね」

「第一線でご活躍されていらっしゃる方たちだ。普通なら、こんなふうに個人指導をしていただくなんてありえないことなんだよ」

 さすが。ご近所付きあいのレベルも違う。

 キッチンにお盆を片付け、リビングに戻ると、改めて紹介します、と芹澤さんが切り出した。

「今回は無理なお願いをお聞きいれいただきまして、本当にありがとうございました。この女性をおふたりのお力で磨き上げていただければと思っております。来栖エリカといいます」

「来栖エリカです。どうぞよろしくお願いいたします」

 先生が同時にわたしに視線を向ける。
 品定めしようとする視線。
 ああ、この感じ。
 なんか、覚えがある。

 オーディションで審査員を前にしたときとの緊張感と同じだ。
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