Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 場の緊張をほぐすように、篠崎先生がにこやかに笑った。

「とても可愛らしい方。まあ、どれだけお役に立てるかわかりませんけれど、親しくさせていただいている芹澤さんの息子さんのお願いですもの。一生懸命勤めさせていただきますわ」

 一方の神谷先生は戸惑いを隠さなかった。

「2カ月なんていう短期間で、どこまでのことがお教えできるかわかりませんけれどもね」

「無茶なお願いと言うのは、重々承知の上です」

  芹澤さんが頭を下げたので、わたしもそれに倣《なら》った。
「来栖さん、でしたね。厳しく当たることもあろうかと思うけれど、くじけずに努力してくれますね」

  わたしは神谷先生の目を見て、「はい」と答えた。

 真剣な気持ちが伝わったのか、先生は頷き返してくれた。

 エレベーター前で、芹澤さんと一緒に先生方を見送った。
 扉が閉まったとき、思わずふーっと大きなため息が出た。

「緊張した?」
「はい。こんなに緊張したのは久しぶりです」

 わたしは肩を2、3度上下して、かちこちになっていた身体をほぐした。

 横で見ていた芹澤さんは「慣れない環境で慣れないことをするんだから、緊張して当たり前だよ。困ったことがあったらいつでも言って」と気づかってくれた。

 その優しい眼差しで見つめられたら、自然と元気が出てくる。

「ありがとうございます。そう言っていただくと、とても心強いです」
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