Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 でも……、とわたしは続けた。
「今日、先生方にお会いして、改めてチャンスだと気づきました。この機会にマナーや作法をしっかり身に着ければ、今後の仕事に大いにプラスになるなって」

 そうだ。無事にこの大役を終えたら、酒井さんと相談して、ひさしぶりにオーディションに挑戦してみよう。

 着物を着こなせるようになれば、時代劇とかいけるかもしれないし。

 仕事に対してこんな前向きな気持ちになったのは、いつ以来だろう。

 いや、ここまでやる気になったのは、はじめてかもしれない。

 芹澤さんは穏やかな表情でわたしの話に耳を傾けている。
「わたし、今の事務所に入ってからずっと、誰かに期待されることってなかったし、自分でもその状況に慣れてしまっていて。でも、今回、芹澤さんに『きみならできる』と強くおっしゃっていただいて、やる気が湧いてきました」

 わたしはもともと負けず嫌いな性格だった。
 芹澤さんがそれを思い出させてくれた。 
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