Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 数十分後、シャワーを浴びてスーツに着替えた芹澤さんは、いつものザ・グレイテスト・イケメン。

 あまりの変身ぶりに、この人、実は魔法使いなんじゃないかと思う。

「やっぱり、朝食は取るべきだね。朝イチから頑張れそうだよ」

 ああ、キラキラオーラが眩しすぎて、目がくらむ。

「そうだ、この間の宿題、覚えてる? エリカ」
  うう、忘れてると思って、安心してたのに。
「覚えてますけど……」
 そんな、期待の眼差しで見つめられると……困るんですけど。

「あの、早くしないと、遅刻しますよ」
「大丈夫だよ。ぼくはタイムカードを押す訳じゃないんでね」

 もー、仕方がない。
「わっかりました。じゃあ、そ、宗太さん、いってらっしゃい……」

 あー、照れる。

 芹澤さんは満足気にうなずくと、
「よし、ちょっと、たどたどしいけど合格。エリカも頑張れよ。今日からが、本格的な始まりだからね」

「はい、気合入れて頑張ります。では、いってらっしゃい」

 わたしがそう言って送りだそうとすると、芹澤さんは
「親以外の人と暮らすのは、はじめてだけど。いいもんなんだな。『いってらっしゃい』って見送られるのは」
 と実に素直な感想を述べ、それから極上の笑みを浮かべた。

 それはもう永久保存しておきたいような笑顔で。

 まだ、春も浅くて肌寒いというのに、なんだか顔がほてってくる。

 こらこら。
 ぼーっとしている場合じゃない。
 芹澤さんにも言われたでしょう。

 今日からが、本当のスタートだ。
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