Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「どうぞ」
 30分ほどしてやってきた男を目にしたとたん、OKしたことを後悔した。

(やっぱ、とんでもなく危ない仕事じゃないの、これって)

 にこりともせず、黒の高級国産車の後部ドアのそばに立っていたのは、真っ黒な髪を七三分けのオールバックにした長身の男性。

 すっとナイフを入れたような切れ長の目はするどく、鼻筋が通り、唇も薄い。

 はっきり言って、昔のヤクザ映画なんかに出てきそうなご面相。

 酒井さーん。マジで反社会勢力じゃないよねー。

 不安を覚えたわたしは、車の扉に手をかけたまま、未練がましく事務所のほうに顔を向けた。

 酒井さんは、窓から顔をのぞかせて、例のニコニコ顔で手を振っている。

 もう、せめて面接ぐらい一緒に来てくれればいいのに。
 後で文句言ってやらなきゃ。
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