Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「ただいま」

 芹澤さんがわたしの部屋のドアのノックしたのは夜の9時すぎ。

 帰ってきた!

 気持ち的には飛びつきたいほど嬉しかったけれど、その想いが顔に出ないように細心の注意を払いながら、わたしはドアを開けた。

「おかえりなさい。出張、お疲れさまでした」
「うん。ちょっといいかな。お土産を渡したいんだけど」
「どうぞ」
「はい」

 彼が差し出したのは、小型の紙袋。
 中には綺麗な缶に入った中国茶と、黒い長方形のケースが入っていた。

「開けてもいいですか」
「うん、早く開けてみて」

 芹澤さんはドア枠に片手をついた姿勢で、上から覗き込んでくる。

 その箱を開けて、驚いた。
 入っていたのは、中央に赤い宝石が据えられた真珠のチョーカー。

 大粒の宝石がライトを受けてきらめいている。
「……綺麗」
「租界時代のものらしいよ。骨董屋で見つけたんだ。どう、気に入った?」
「もちろんです。でも……」

 こんなものをもらっていいのかな。

「その石はガーネットなんだって。物事を成功に導いてくれる石だそうだよ。だから、今回の計画がうまく行くように身につけてもらえたら嬉しいな」

 芹澤さんは顔を少し傾けて、わたしを見つめた。
「それに、その赤、ぜったいエリカに似合うと思ってね。パーティーのドレスもそれに合わせて作らせるよ」
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