Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「どう、だいぶ慣れてきた?」
「慣れてはきましたけれど、教わったことが身についたかと言われれば、まだ自信はないです」
「そう焦ることはないよ。まだ時間はあるんだから」

 そんな話をしながらも、わたしは芹澤さんの所作に見とれていた。

 ナイフとフォークの使い方が流れるようで、とても優雅。

 そして、とろとろの半熟卵を食べたにもかかわらず、食事後のお皿の綺麗なこと!

 この人はやっぱり、魔法使いなんじゃないかな。

 報われぬ恋に悩む苦しい胸の内はひとまず脇に置いて、彼とこうして一緒に食卓につけるのはとてもありがたかった。

 彼のような美しい所作を身に付けたいという気持ちが、レッスンに対するモチベーションを上げてくれる。

「最近、困っていることはない? 平日、あまり話を聞いてあげられないから気にはなっていたんだけど」

「あの、ひとつだけいいですか?」
「何なりと」

「ビデオカメラが欲しいんですが」
「ビデオ? 何を撮るの?」

「レッスンの様子です。いままでテーブルにスマホを立ててたんですけど、なかなかうまく撮れなくて。やっぱりビデオカメラと三脚があったほうがいいなと思って」
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