Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 車で向かった先は、なぜか湾岸地区にあるヘリポートだった。

「この辺にお花見の穴場があるんですか?」

 芹澤さんは得意げにニヤリと笑った。
「空の上からの花見と洒落こもうと思って」
「っていうことは。ヘリに乗るんですか⁉」

「うん。ぼくのヘリ、ちょっと窮屈だけどね」

 今、ぼくの、って言った?
 オーナーってことかな?

 滑走路にはかなり強い風が吹きつけていた。
 風にあおられて、髪が乱れまくる。
 髪の毛、まとめてくればよかったとちょっと後悔。

 10メートルほど歩くと、すでにエンジンがかかっている小型の赤いヘリコプターが見えてきた。

「あれが〝ミス・フラーゴラ〟。フラーゴラって、イタリア語で『イチゴ』のことなんだ。赤くてイチゴみたいだろ? ぼくの愛機なんだ」

「どうぞ、いつでも飛べますよ」
 ヘリポートの係員が芹澤さんに声をかけた。

「ありがとう」
 そして、芹澤さんは外部点検をした後、自ら操縦席に乗り込んだ。

 えっ? ヘリの操縦までできるの、この人!

 もう大概のことでは驚かなくなっていたけれど、これにはやはり度肝を抜かれた。
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