Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 そして、密集する建物の合間に、あちらこちらで淡いピンク色の桜が咲き誇っている。
「あの辺が隅田川沿いの桜。これから上野や千鳥ヶ淵、新宿御苑……東京中の桜の名所、全部見られるよ」

「こんな贅沢なお花見、生まれてはじめてです」
「喜んでもらえた?」
「もちろん! これで喜ばなかった、ばちが当たっちゃう」

 芹澤さんの笑い声がヘッドフォンから直接耳に飛び込んでくる。
 彼の声も、この最高の気分をさらに盛り立てる原動力のひとつ。

「ほら、あそこがベリーヒルズだ」
 高層のオフィス棟が陽をあびて、まるでそれ自体が光を放っているようだ。

 こうして上空から眺めると、改めて、今の自分の境遇が奇跡に思えてくる。
 あの都会のオアシスみたいな場所で、芹澤さんと一緒に暮らしている、そのことが。

 ちらっと横に目をやる。
 彼の、芸術的な角度の鼻筋が目に入る。
 わたしの視線に気づいて、彼も微笑みかえしてくれる。

 こんなにも心が浮き立つ場面、夢のなかでさえ経験したことない。

 わたしの興奮は最高潮に達した。
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