Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
第6章 甘い計略
 けれど、叶わぬ想いに、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかなかった。

 今日は月曜日。
 厳しい神谷先生のレッスンだ。

 今、わたしが悪戦苦闘しているのは、お茶の作法。

 ゴールデン・ウィークの最終日に、神谷先生がお茶会を開かれるので、わたしも水屋のお手伝いをさせていただくことになっていた。

 他のお弟子さんの足を引っ張らないように、できるかぎりのことを熟《こな》せるようになっておかなければならない。

 レッスンを撮った動画を繰り返し見て、先生の話を頭に叩き込み、さらに教本やネットでも補足して、教わったことをしっかりと身に付けることに力を注いだ。

 でも、必死になれる課題があるのは、ある意味ありがたかった。

 その間は、芹澤さんのことを、想わずにいられる。

 一方、芹澤さんも連休前に片付けなければならない仕事があるようで、前よりもさらに帰宅が遅くなり、週末、仕事に出る日も増えた。

 たまに外泊してくることも……
 そういうときは、何も考えないようにした。

 下手に想像すると、辛くなるだけだし……

 起床時間も徐々に遅くなり、朝食中にゆっくり話す時間も減った。

 寂しいと思う反面、ほっとしていた。
 これ以上、惹かれる要素が増えたら、この気持ちを自分のなかに留めておけなくなることがわかっていたからだ。

 芹澤さんとは、このぐらい距離があったほうが、〝偽装恋人〟の仕事をやり遂げるにはちょうどいい。

 あと、ひと月と少し。
 このまま、心を乱さずに過ごせれば。
 そう思っていた。
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