Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 ゴールデン・ウィーク前日の夜も芹澤さんの帰りは遅かった。

 玄関が開く音がしたときには、午前1時を回っていた。

 もうパジャマに着替えていたので、出迎えずに部屋にいた。

 でも、いつもと様子が違う。
 普段なら、なるべく物音を立てないように気を使ってくれるのに、今日はやたらと大きな音を立てている。

 しばらくして、ドンと何かが倒れる大きな音がした。
 わたしはたまらず、カーディガンをはおってリビングに向かった。

 キッチンの明かりが付いていたので覗いてみると、芹澤さんがミネラルウォーターのボトルを前に置いて、テーブルに突っ伏していた。

 横の椅子が倒れている。
 さっきの音の正体はこれか。

 そばに寄る前から、かなりきついアルコールの匂いがした。
 彼が泥酔するほど飲むのはめずらしい。
 こんな姿を見るのははじめてだった。

 わたしはグラスを取り、テーブルにあったミネラルウォーターを注ぐと、そっと彼の前に置いた。 
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