Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 本当に世話が焼ける……
 でも、こうして、いつまでも手助けができたら、どんなに……
 また、叶いもしない夢が頭をもたげる。

 なかなかその場を立ち去ることができずに、ただ彼の寝顔を見つめていた。

 手を伸ばせば届くのに……
 窓から見た月よりも遠い存在の彼の姿を。

 ふと、この中途半端な状態を終わらせたいという気持ちが頭をよぎった。

 眠りに落ち、かすかに開いた彼の唇。
 触れてみたい、そこに。
 たまらなく。
 唇を重ねあわせたい。
 ずっと抑えつけていた本心が殻を破って表に出ようとする。

 そんなことをしたら、きっと彼は困惑するだろうけれど。
 でも……
 もう……けりをつけてもいいか。

 わたしは夢遊病者のようにベッドに一歩近づいた。
「うん……」
 そのとき、彼が寝返りを打った。

 いけない。
 欲求が理性を食い尽くす前に、部屋を出なければ……

 これ以上、この人と生活するのは無理だ。
 これ以上……ここにいることはできない。
< 92 / 153 >

この作品をシェア

pagetop