Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
「すまなかったね。お陰で命拾いした。狭心症の発作だよ。こうして薬を飲めば収まるんだが」
「病院までご一緒しましょうか?」
「もう少しここで休めば、大丈夫だ」
「でも、すぐそこですし。お医者様に診ていただいたほうが安心ですよ」
「いや、家に戻ってから往診を頼むから心配いらんよ」

 そう言って顔を上げ、わたしの顔を見たとたん、その人は驚きの声をあげた。

「ち、蝶吉じゃないか……なんでこんなところに?」
「えっ?」
 目をしばたたかせて、その人は改めてわたしの顔を凝視した。

「いや、蝶吉はとうに死んだはずだ。しかし、まあよく似ている」

「どなたかに似ているんですか、わたしが」

 話を聞こうとしたそのとき、広場の向こうからパタパタという足音が聞こえてきた。
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