Sweet Strawberry Trap 御曹司副社長の甘い計略
 芹澤さんは二日酔い、わたしは寝不足で食欲がなく、朝食は買い置きの鮭茶漬けで簡単に済ませた。

「あの、お話ししたいことがあるのですが」
「うん?」
「パーティーまでの残りの期間、ここを出て、家からレッスンに通うことにしたいのですが」

 芹澤さんは困惑気味に目を見開いた。

「あのさ。もしかして……昨夜、酔いに任せて、エリカに何か無体なことをしてしまった? それで嫌気が差したとか」 

 実は、ほとんど記憶がなくて、と彼は不安そうに瞳を揺らめかせた。

「違います。そんなこと、まったくなかったです」
「じゃあ、なんで? 家から通うんじゃ不便だろう?」
 いつものように、芹澤さんは正面からわたしの目を見据えた。

 彼のまっすぐな眼差しは、わたしの心の奥底まで入り込んできた。

 それを見て、ごまかしてはいけないと思った。
 今の気持ちを包み隠さず、正直に伝えなければいけない、と。

 わたしは一度大きく息を吸い、それから口を開いた。
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