転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
(相変わらず嫌な言い方をする。俺たちの仲がこんなに悪いのは、もとはと言えば父さんのせいなんだよな)

後継者を長男とする家が多い中、彼らの父はそう言わなかった。

息子たちを競わせ、行いのひとつひとつに優劣をつけて対抗心を煽ったから、三兄弟はお互いを疎ましく思うようになってしまったのだ。

結局、家督は長男ロバートに譲られることとなり、次男のリチャードは悔しそうであった。

ジェラルドはまだ若く、自分は指名されないだろうと半ば諦めていたため、リチャードよりは冷静でいられたように思う。

「早くしろ」と最後に来たリチャードに急かされ、ジェラルドは嫌な気分で立ち上がった。

兄ふたりを連れて、亡き父の書斎に向かう。

エマに教えられた通りに暖炉の奥を覗くと、内壁の色が違う部分があるのに気づいた。

そこを崩せば、鉄製の隠し扉が現れる。

ゴクリと唾をのんだジェラルドが、慎重に扉を開いたら……子供なら入れそうな空間がぽっかりと現れた。

「あったよ!」

ジェラルドが興奮気味に言うと、兄たちに「出せ」と偉そうに命じられる。

白い布に包まれた四角く平べったいもの、それが宝のようだ。

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