転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
そう。ブルロズの六人いる攻略対象の最期のキャラは、ボビー・コネリだ。

将来は美形になりそうな愛らしい顔立ちで、唯一バッドエンディングのないキャラらしいが、エマの感覚としては八歳の子供を恋愛対象にはできない。

それにブルロズのストーリー通り、ボビーが夢中なのはシンシアの方である。

屋敷の玄関ドアを勝手に開けようとしたボビーが、慌てた祖父に捕まってジタバタしていた。

エマは木の陰に顔を引っ込め、深いため息をつく。

「王太子一択になってしまった……」

≪恵麻の仕えるお嬢様も、王太子に惹かれているっぽいんでしょ?≫

「うん。王太子殿下と話す時のレミリア様はいつもより可愛いの」

≪頑張ってハッピーエンドにしてあげて≫

もう目覚めの時間だと、由奈との電話は終わった。

スモフキンは素っ気ない態度で、フワフワと飛び去る。

エマは青空を見上げて、表情を引き締めた。

「よし、覚悟を決めた。レミリア様を王太子妃にしてみせる。絶対に……」

両手を握りしめ、ひとり静かに決意する早朝であった。

* * *

空が茜色に染まる頃。

王城の大邸宅前に馬車が一台、停車した。

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