転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです（汗）
使用人が開けた扉から優雅に降りてきたのは、王太子クリストファー。

出迎えた近侍のオズワルドがクリストファーを労う。

「ドレイユ伯爵領のご視察、お疲れ様でございました。いかがでしたか？」

「陳情書にあった通りだ。違法な課税には是正命令を下してきた。ドレイユ伯爵は手違いだったと釈明していたが、監査役を派遣してしばらくは見張るつもりだ」

「処罰はなさらないのですか？」

「一度目の過ちは許すことにしている。なるべく敵を作りたくない。それが平和に繋がる」

ふたりは話しながら邸宅内に入り、廊下を進む。

すると後ろから声をかけられた。

「王太子殿下に申し上げたいことがございます」

足を止めて振り向いたふたりの前には、中年のメイドが腰を折って頭を下げていた。

メイドが気安く王族に声をかけるものではない。

雇われた時に躾がされているはずなのだが、なにを言おうというのか。

オズワルドが眉を吊り上げてメイドを叱る。

「無礼だぞ、分をわきまえろ。お前の所属はどこだ？」

中年のメイドはそれを無視した。

一切恐れずに顔を上げると、クリストファーと視線を交える。

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