転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
オズワルドは『極秘』と書かれた五十ページほどの報告書をクリストファーに手渡した。

「仕事が早いな」

執務机に向かい、報告書をめくるクリストファーの顔色は悪く、目の下にはクマができている。

マリアから出生の秘密を聞かされてからというもの、ほとんど眠れぬ日が続いていた。

(この話が公になれば、危険分子として俺は殺される。外部に漏れてはいけない……いや、もしかするとこの青バラのような目の色に、ローズ家の血筋だと疑っている者が既にいるかもしれない)

マリアの話を信じたわけではないが、誰かに王太子の座から引きずり下されそうな気がして、心が休まらない。

そして一週間前、まずは事実をはっきりさせようと、オズワルドをザセブに向かわせたのであった。

秘密を知るものを増やしてはならないので、オズワルド以外には頼めない。

報告書に目を通していると、ローズ家がザセブ送りになってからの家系図が目に留まった。

マリアの息子はフレッドという名で、十歳で死亡と書かれている。

厳しい環境に耐えられず、早々に亡くなった高齢者も多い。

しかし子供も多く生まれており、現在の一族の総数は二十一人もいた。
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