転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
策を授けたのはエマであるが、心からそう思っていなければ出てこない言葉に聞こえた。

こんなひどい目に遭わされたというのに、レミリアの中には恋心が残されているのではないだろうか……エマはそれも感じていた。

(なんて一途で健気なの。レミリア様は間違いなく、この世界のヒロインよ……)

心を震わせているのは、エマだけではないようだ。

王太子が青い瞳を揺らしていた。

心を落ち着かせようとするように大きく息を吐いた彼は、不安の滲む声で言う。

「先ほどモリンズ伯爵が、三十五通の嘆願書を携えてやってきた。俺が無視できない有力者ばかりだ。その後にはモンタギュー公爵家のブライアン殿も。皆、君の減刑を求めている。君には味方が大勢いるんだな……」

レミリアは不思議そうだ。

王家に心証を悪くしてまで自分の味方をしてくれる人が、家族以外にいるだろうかと疑問に思ったのだろう。

それからハッとなにかに気づいたような顔をして、壁の方に振り向いた。

小さな穴から覗く瞳と視線を交えると、両手で顔を覆って泣き声を上げる。

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