転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
「仕方ないな。許そう」

ちなみに由緒正しき魔法犬の血統で、百十五歳なのだそう。

敬えとばかりの偉そうな態度である。

(どうして私にだけ正体を教えるのか。私は今、焦っていて、スモフキンさんに構っていられる状況じゃないんだけど……)

エマが困り顔をしたら、どこかで電話のベルが鳴り響いた。

驚いて周囲を見回す。

(この世界に電話はないよ。近くから聞こえるけど、これはなんの音?)

すると、スモフキンがエマの顔の前でモソモソしだした。

短い前足を動かし、自分の毛を掻き分けるように腹部を見せつけてくる。

「お、お腹にスマホが……!?」

この世界では存在しないはずのスマホが、スモフキンの腹部と一体化しており、そこから電話のベル音が鳴っていた。

画面に表示されているのは、佐野由奈……前世の双子の妹の名だ。

混乱するエマに、スモフキンが渋みのある声で命じる。

「電話に出ろ。我輩はおなごの肌を見るのは好きだが、自分の腹をさらけ出すのは好かん。早く済ませるんだ」

「は、はい」

急いで電話に出ると、懐かしい声がする。

≪恵麻なの? 私だよ。由奈だよ≫

由奈は泣いていた。

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