転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
そう期待しかけた矢先だというのに、頬の赤みを消したレミリアがプイっと顔を逸らした。

「言っておくけど、バルニエ伯爵との仲を深める気はないからね。私はシンシアみたいに可愛くないし交流が苦手なの。恋愛も結婚もしなくていいわ」

(ああ、双子コンプレックスは健在だった。どうやったらひねくれを取って、素直な性格に矯正できるのか……)

心の中でため息をこぼしたエマだが、すぐに気を取り直し、晩餐会に向けて特訓しなければと意気込むのであった。


月と星が夜空を美しく飾る夜。

今日はバルニエ伯爵の晩餐会である。

エマと双子令嬢、シンシアの婚約者のブライアンは、王都の東地区に建つバルニエ伯爵邸にいる。

晩餐室の六人掛けのテーブルを五人で囲み、談笑しながら食事中だ。

エマの席は、レミリアの隣で正面に誰もいない端の席。

モリンズ伯爵夫人に貸してもらったモスグリーンの落ち着いたドレスを着て、これまた借り物の真珠のネックレスを首に提げている。

いつもより着飾っても、顔が地味なせいで華やかさはゼロ。

それに対して双子令嬢は、二輪のバラが咲いているかのように可憐だ。

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