転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)
レミリアを売り込もうというエマの必死さが皆に伝わってしまったのか、執事が注ぐワインの音が大きく聞こえるほど、シーンとしてしまった。
(あからさますぎた……?)
エマだって十八歳と年若く、こういう場に慣れていない。
というより、初めてだ。
取り繕う術を持たずに困っていたら、バルニエ伯爵がクスリとしてレミリアに声をかけてくれた。
「そういえば、王城の園遊会で、レミリア嬢は人一倍熱心にバラをご観賞でしたね。私を含めた男性陣は、バラよりもあなたの美しさに目を奪われていましたが」
「そのようなことは、あの、ないと思います……」
レミリアの白い頬が赤く染まり、恥ずかしげにうつむいた。
その反応に、エマは膝の上でグッと右手を握りしめる。
(そうそう、そういう会話がほしかったのよ! ただ食べて帰るだけじゃ、この晩餐会イベントの意味がなくなってしまう)
やっとゲームに沿った展開になろうとしていた。
バルニエ伯爵がバラの彫刻の施されたナイフの持ち手を見つめ、寂しげに微笑む。
「私は妻を五年前に亡くしています。心臓の病です。バラは妻が好きな花でした……」