平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
ジェドの言い方は、まるで自分自身に言い聞かせているみたいだった。いつもは冷静な彼から、必死さを感じて、ひとまずリズはこくこく頷き応える。

逃げないと伝わってくれたのか、やや拘束力が緩む。

「リズ、すまない。実は、媚薬を」

言葉を待っていると、ややあってから、彼が苦しそうにとぎれとぎれでそう言ってきた。

「媚薬!?」

リズは叫んだ拍子に、数日前、獣騎士団にジェド宛てで、媚薬入りの菓子が贈られてきたことを思い出した。

――その贈り主は、彼を大親友と呼んでいるニコラスである。

なっ、なんて恐ろしい。またやったの!?

しかも、ジェドのこの様子からすると、今度はちゃっかり服用させることにも成功したようだ。

王都(とかい)では、普通に媚薬の飲用などがされていたりするのだろうか!?

そう思って体が強張った時、ジェドに抱き締め直されてハッとした。力いっぱいの抱擁だったのに、それはリズを労わってどこも痛くしないもので。

「リズ、大丈夫だ。どうか怖がらないで欲しい」

「団長様……?」

微かに、その背が震えていることに気づく。

「もしかして、じっとしていると苦しいんですか?」

< 293 / 310 >

この作品をシェア

pagetop