平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
ハッと悪党面の笑みで凄んだジェドが、怨念でもこめるかのような声で『別』という部分を強調して言った。

てっきり、一人息子である第一王子ニコラスに関することだと思っていた。コーマックと獣騎士たちが、嫌な予感を覚えた顔で目線をエドモンドへ移動する。

仕事の案件を、提案されているものでもあるらしい。しかしリズは、ジェドが語った『ついで』部分が気になった。彼の機嫌は、そこに理由があると言わんばかりに大層悪そうだ。

そう思っていると、ふとジェドの目がこちらに向けられた。

「ひぇっ。あ、いえ、その、なんで機嫌が悪いのでしょうか……?」

じーっと見つめられたリズは、ぴりぴりとした彼の無言の視線に耐えられず、そう尋ねた。

誰もが問えないでいた言葉だった。すると、まるでそれを待っていたと言わんばかりに、ジェドの美しい顔にフッと冷笑が浮かんだ。

「何やら、陛下の手紙によると、『この俺が、女性を連れてくるかもしれないから、それをとくに楽しみにしている』らしい」

「『女性』?」

教えられた手紙の要約の一部に、リズは小首を傾げその言葉を繰り返す。そもそもどうして、それを自分に向けて言うのだろうか?

そのそばで、コーマックたちが「え」と戸惑う空気を漂わせる。

すると、ジェドがギロリとエドモンドへ視線を戻した。

「おい。お前、こっちへ来て様子を知らせたんだろう。その際に、一体、陛下になんと書いて送った?」

ジェドは、心底ブチ切れの目を向けている。

睨み付けられたエドモンドは、想いを伝えられないでいる彼を前に、少し考える素振りをした。
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