平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
獣騎士団をとりまとめているグレイソン伯爵は、白獣の生息地であるグレインベルトの領主としても、早く妻を迎えて後継者をと期待されている。

そんな中で恋人ができたなんて言われたら、――急ぎで手紙を送ってくるくらいに国王は喜んだのだろう。

「な、なんでそんなことになっているんですか」

察したリズも、スケールがでかすぎる一件に眩暈を覚えた。エドモンドがジェドに送ってきた手紙の偽名と文面を思い返すと、そう誤解されてしまう一文が書かれた可能性がありありと浮かぶ。

国王の目的は、〝恋人を連れてきなさい〟というものであるらしい。

だが、恋人なんていないのだから、カルロに騎獣して王宮に向かったとしても、国王の一番の目的を叶えるのは無理だ。

恐らく、今回の手紙は、登城を断るのが難しいものなのかもしれない。それもあって、だからジェドは怒っているのだろう。

「でも、本当に、どうしてそんな誤解に繋がる文章になったのかしらね……」

文章力に欠けているというよりは、問題ありありの能力である。

首を捻るリズに対して、気を利かせたつもりのエドモンドは胸を張って座っている。それを見たジェドは、素の表情で「チィッ」と舌打ちした。

――ほんと余計なことしやがって。

ジェドの横顔は、そうありありと語っている。実のところ、自分たちが彼に釘を打ってやったせいでこうなっている……と知られたら殺されてしまうかもしれない可能性を考え、コーマックたちは静かだ。

その時、エドモンドが名案を思い付いた顔をした。とある意思を伝えるべく、コーマックたちに目配せする。

(ここは、ジェド団長のためにも、私が一役買ってやりましょう)
< 56 / 310 >

この作品をシェア

pagetop