平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
リズは、鬼上司の気迫にも物怖じしなかったエドモンドに呆然とした。

そもそも国王の勘違いから今回の手紙まで、もとはと言えば、彼が出した〝報告〟のせいなのだが、それほどまでに幼獣の件を調査して欲しいらしい。

――けれど、と、素人のリズも思う。

エドモンドからの提案については、確かに、調査を疑われない理由としてはばっちりだろう。

第一王子が預かっている幼獣の件を、微塵にも疑われずに滞在して調査することも可能だろう。それでいて縁談関係も含んでいる、この大量の手紙が届いている現状もほぼ解決する。

でも、そこには大きな問題が一つあった。

「そうするとしたら、恋人役が必要、よね……」

一体誰が、未来の婚約者のふりをして彼に同行するのか。さすがに国王を騙すような形で恋人役をさせて、そう紹介するわけにもいかないだろうし――。

その時、リズは、同じくエドモンドからの提案を考えていた一同の視線が、いつの間にか自分に集まっていることに気づいた。

――ここで〝団員〟の女性は、自分一人。

しかも、相棒獣のカルロだって平気だ。それでいて、ジェドが表ではドSを隠しているという事情も、獣騎士団の仲間の一人として知っている。

そこまで考えたところで、察して口元が引き攣った。

「……ま、まさか、私に団長様の〝未来の婚約者〟のふりをしろとか、言わないですよね……?」

こんな平凡な自分が、団長様の恋人役なんて絶対、無理だ。もう見た目からして即バレしてしまうに違いない。
< 58 / 310 >

この作品をシェア

pagetop