平凡な私の獣騎士団もふもふライフ2
「え。あの、私、まだ正式に婚約者ではな――」

「白獣は、我が国の守り神だ。それに選ばれた戦士は、勇者にして聖なる騎士といわれるくらい一目置かれている。白獣に認められたお前を、グレイソン伯爵家に相応しくない女だと言う人間は、ここにはいないだろうさ」

ニコラスの話に、リズは大きな赤紫色(グレープガーネット)の目を瞬いた。

「聖なる騎士……?」

「ふむ、田舎地方では耳にするのも少ないのか。白獣は、戦闘獣というより聖獣として扱われているところもある。とくに王都では、そのイメージが根強い」

美しい白い体、クイーンダイヤと呼ばれている最高級宝石のようなバイオレットの瞳。そして、騎獣した獣騎士に魔力を引き出されて空を駆けられる――。

「なるほど。そう言われてみると、聖獣と取られてもおかしくはなさそうですね」

「翼もないのに空を飛ぶ。恐ろしくもその美しい外見もあって、大昔の人間は、グレインベルトにいた〝獣戦士〟の出撃姿を拝んだと聞く」

「だからニコラスが幼獣に懐かれたことは、歓迎もされている」

ジェドが補足する。獣騎士以外には幼獣も危険な存在とされているが、だからエドモンドをつけて一緒に帰還させた際はとても喜ばれたらしい。

――第一王子が、聖なる守り神である白獣の子を胸に抱えての帰還。

当時、帰還のパレードが大々的に執り行われたのだとか。前グレイソン伯爵が呼ばれ、引退した相棒獣と共に幼獣と会って意思確認もなされた。

「意思確認?」

「俺たちは、相棒獣と魔力で繋がっている間は会話ができる。我が一族、そして獣騎士団にとって、何よりも大事なのは白獣自身の気持ちだ」
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