今、君に想いを伝えて、ここで君を抱きしめる
黙って安寿はゆっくりと立ち上がると、背中に手を回してファスナーを下ろしワンピースを脱いだ。それから、インナーも全部脱いで、安寿は裸になった。月明かりに照らされて安寿の身体が白く浮き上がるように光る。航志朗はこのうえなく美しい安寿の姿を見つめた。あるがままに安寿は微笑んだ。そして、安寿は航志朗の隣に静かに腰掛けた。
航志朗は安寿の黒髪に手を触れた。安寿はその手を握って身を寄せて、そっと航志朗にキスした。航志朗は安寿をきつく抱きしめて声を絞り出して叫んだ。
「安寿……、安寿!」
航志朗はベッドに安寿を横たえるとパジャマを脱いで裸になった。そして、航志朗は安寿に覆いかぶさった。安寿と航志朗は互いの瞳を見つめ合う。その濡れたように輝くきらめきに互いに互いを心の奥底から求めていることを知った。
両腕を回し合って、ふたりはしっかりと全身を密着させた。初めての互いの素肌の感触に身も心もうずかせる。ふたりは唇を深く重ねて互いを強く求め合った。安寿はわかっている。もうすでに私は彼とあれをしているんだと。
航志朗は安寿の右腕を手に取るとその傷あとにそっと唇を這わせた。航志朗は身を起こして安寿の左足の膝にキスした。それから安寿の左足を持ち上げて、その足首にまた優しく口づけた。安寿は思わず目の奥が熱くなった。そして、航志朗は安寿の身体じゅうに何度も何度もキスした。鼻の頭から足の小指の爪の先まで。安寿はくすぐったくなって身をよじり、それから初めての甘くとろけるような感触に熱い吐息を何回ももらした。
ずっと安寿は気づいていた。航志朗の手の指先が震えている。これをすることに慣れた男だというのに。やがて、航志朗は安寿から身を離してベッドに腰掛けた。そして、また苦しそうに航志朗は頭を抱えた。目をきつく閉じて航志朗は低い声で言った。
「安寿。もうこれ以上、俺は君を傷つけたくない」
安寿も起き上がって、航志朗の背中に抱きついた。
「航志朗さん、あなたは一度だって私を傷つけてはいませんよ」
切なくなるほど優しい声音だ。
航志朗はうなだれて震えている。安寿はしばらく航志朗の背中を見つめてから、航志朗の脚の上にまたがった。目を開けた航志朗は驚いて安寿を見上げた。
(初めてだけど、私はこれを知っている)
安寿は航志朗を自分のなかに導いていった。すぐにやって来るその痛みを安寿は俯瞰するように上から眺めた。
心の奥底から驚愕させられた航志朗は、どうしても安寿を止められない。航志朗は安寿のなかに呑み込まれていった。今まで感じたことがない快感が激流のように身体じゅうを突き上げてくる。航志朗は安寿にしがみついた。目の前の安寿はきつく眉をひそめている。あせった航志朗は大声をあげた。
「安寿、大丈夫なのか!」
「大丈夫。これは私を傷つける痛みじゃないから」
安寿は身体の力を抜いて航志朗に身をあずけた。ふたりは静かに抱き合う。下を見た安寿は頬を赤くして言った。
「航志朗さんが、私のなかに入ってる」
「ああ、そうだな」
航志朗も顔を赤らめた。
「航志朗さん……」
「ん?」
「このあと、どうすればいいんですか?」
思わず航志朗は表情をゆるめた。こんなまっただなかでも、安寿はあどけない瞳で航志朗を見つめている。航志朗の心のなかにどうしようもなく安寿が愛おしくてたまらない気持ちがあふれて出てくる。そして、航志朗は安寿の足ががくがくと震えていることに気づいた。安寿は自分のために身を挺しているのだ。急激に心の奥底が燃えさかり、その熱風が航志朗の身体じゅうを激しく揺さぶった。
「……あとは俺に任せろ」
素直に安寿はうなずいた。それから安寿と航志朗は手を握って抱き合った。
ベッドに仰向けになって目を閉じた安寿は、頬に何かがしたたり落ちてきたのを感じた。目を開けると安寿はそれに気づいた。
(航志朗さんが、……泣いている)
安寿はゆっくりと手を伸ばし航志朗の頭を引き寄せて胸に抱いた。航志朗は安寿の胸に腕を回して顔をうずめた。微笑みながら安寿は優しく航志朗の髪をなでた。その居心地のよさに安堵して、だんだん航志朗の意識は薄れていった。重くなっていくまぶたが航志朗の潤んだ琥珀色の瞳を覆いはじめる。航志朗は小声でつぶやいた。
「安寿、俺は君を愛している……」
航志朗は深い眠りに落ちた。安寿は長いため息をついて、航志朗の頬についた涙の粒を唇でぬぐった。そして、その額にそっと口づけてからささやいた。
「私もあなたを愛しています。……おやすみなさい、航志朗さん」
安寿は毛布で自分たちをくるんでから目を閉じた。すぐに安寿にも深い眠りが訪れた。
今夜の白い月も夜のとばりのなかで抱き合って眠るふたりを静かに見守っていた。
航志朗は安寿の黒髪に手を触れた。安寿はその手を握って身を寄せて、そっと航志朗にキスした。航志朗は安寿をきつく抱きしめて声を絞り出して叫んだ。
「安寿……、安寿!」
航志朗はベッドに安寿を横たえるとパジャマを脱いで裸になった。そして、航志朗は安寿に覆いかぶさった。安寿と航志朗は互いの瞳を見つめ合う。その濡れたように輝くきらめきに互いに互いを心の奥底から求めていることを知った。
両腕を回し合って、ふたりはしっかりと全身を密着させた。初めての互いの素肌の感触に身も心もうずかせる。ふたりは唇を深く重ねて互いを強く求め合った。安寿はわかっている。もうすでに私は彼とあれをしているんだと。
航志朗は安寿の右腕を手に取るとその傷あとにそっと唇を這わせた。航志朗は身を起こして安寿の左足の膝にキスした。それから安寿の左足を持ち上げて、その足首にまた優しく口づけた。安寿は思わず目の奥が熱くなった。そして、航志朗は安寿の身体じゅうに何度も何度もキスした。鼻の頭から足の小指の爪の先まで。安寿はくすぐったくなって身をよじり、それから初めての甘くとろけるような感触に熱い吐息を何回ももらした。
ずっと安寿は気づいていた。航志朗の手の指先が震えている。これをすることに慣れた男だというのに。やがて、航志朗は安寿から身を離してベッドに腰掛けた。そして、また苦しそうに航志朗は頭を抱えた。目をきつく閉じて航志朗は低い声で言った。
「安寿。もうこれ以上、俺は君を傷つけたくない」
安寿も起き上がって、航志朗の背中に抱きついた。
「航志朗さん、あなたは一度だって私を傷つけてはいませんよ」
切なくなるほど優しい声音だ。
航志朗はうなだれて震えている。安寿はしばらく航志朗の背中を見つめてから、航志朗の脚の上にまたがった。目を開けた航志朗は驚いて安寿を見上げた。
(初めてだけど、私はこれを知っている)
安寿は航志朗を自分のなかに導いていった。すぐにやって来るその痛みを安寿は俯瞰するように上から眺めた。
心の奥底から驚愕させられた航志朗は、どうしても安寿を止められない。航志朗は安寿のなかに呑み込まれていった。今まで感じたことがない快感が激流のように身体じゅうを突き上げてくる。航志朗は安寿にしがみついた。目の前の安寿はきつく眉をひそめている。あせった航志朗は大声をあげた。
「安寿、大丈夫なのか!」
「大丈夫。これは私を傷つける痛みじゃないから」
安寿は身体の力を抜いて航志朗に身をあずけた。ふたりは静かに抱き合う。下を見た安寿は頬を赤くして言った。
「航志朗さんが、私のなかに入ってる」
「ああ、そうだな」
航志朗も顔を赤らめた。
「航志朗さん……」
「ん?」
「このあと、どうすればいいんですか?」
思わず航志朗は表情をゆるめた。こんなまっただなかでも、安寿はあどけない瞳で航志朗を見つめている。航志朗の心のなかにどうしようもなく安寿が愛おしくてたまらない気持ちがあふれて出てくる。そして、航志朗は安寿の足ががくがくと震えていることに気づいた。安寿は自分のために身を挺しているのだ。急激に心の奥底が燃えさかり、その熱風が航志朗の身体じゅうを激しく揺さぶった。
「……あとは俺に任せろ」
素直に安寿はうなずいた。それから安寿と航志朗は手を握って抱き合った。
ベッドに仰向けになって目を閉じた安寿は、頬に何かがしたたり落ちてきたのを感じた。目を開けると安寿はそれに気づいた。
(航志朗さんが、……泣いている)
安寿はゆっくりと手を伸ばし航志朗の頭を引き寄せて胸に抱いた。航志朗は安寿の胸に腕を回して顔をうずめた。微笑みながら安寿は優しく航志朗の髪をなでた。その居心地のよさに安堵して、だんだん航志朗の意識は薄れていった。重くなっていくまぶたが航志朗の潤んだ琥珀色の瞳を覆いはじめる。航志朗は小声でつぶやいた。
「安寿、俺は君を愛している……」
航志朗は深い眠りに落ちた。安寿は長いため息をついて、航志朗の頬についた涙の粒を唇でぬぐった。そして、その額にそっと口づけてからささやいた。
「私もあなたを愛しています。……おやすみなさい、航志朗さん」
安寿は毛布で自分たちをくるんでから目を閉じた。すぐに安寿にも深い眠りが訪れた。
今夜の白い月も夜のとばりのなかで抱き合って眠るふたりを静かに見守っていた。