黙って一緒に堕ちてろよ

「……ん、もー行った」


薄い唇が、一音一音を形づくる。


「っ、あ、そ」


私は、古茶くんに見られないように、そっと顔をそらす。


「いやー、すっきりした。鬼の形相だったな、はは。見せてやりたかった。岩倉さんの位置からじゃ見えなかったのが残念だなー」


「そんなの見せられても嬉しくもないわ。……それよりも」


古茶くんは、彼女が行った、と言ったのに、一向に離れようとしないのだ。私は依然として彼に締められたまま。こんな場面、他の誰かに見られたら、また面倒なことになる。主に私が。


私と彼は、表向きは優等生。けれども、一重に優等生と言ってもいろいろある。


つまるところ、加えて彼はモテる。嫌なことに。


だから、不平等だけれど、私が彼に近づいてひんしゅくを買うことはあっても、彼が私と一緒にいてひんしゅくを買うことはないのだ。





──だってのに。
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