黙って一緒に堕ちてろよ
「いい加減離してよ」
そう言っても、彼は私を離そうとせず。「ねぇってば」と急かしたら、やっと少し力をゆるめた。
耳に息がかかるくらいだった距離が、お互いの顔を視認できるくらいの距離になる。
私は、古茶くんの顔を見つめる。顔を見たら少しはなに考えてるのかわかるかな……なんて思ったけれど、甘かった。彼の顔を見ても、今彼がなにを考えているのかは私にはまったくわからない。わかり合えない。
古茶くんと仲良しこよしできる未来がまったく想像できないから、もしかしたらそういう運命なのかもしれない……なんて、考えていると。
古茶くんが、私の腕をつかんで。なにを血迷ったのか、ぐいっと力強く引き寄せられて。
「────え」
──油断した。
そう思ったときにはもうすでに遅く。ゼロ距離になったとき、思考は彼方に飛んでった。
なにかが唇を這う感覚がある。なにが?脳の理解が追いつかない。唇を、舌でなぞられる。唇を舐められる。
──クチビルヲナメタ?
「──っ!?おま、お前、なにして」
驚いて、パッと飛び退いた。驚くなんてもんじゃない。危険信号バッチバチ。
古茶くんは、そんな私を見て、ふ、と笑った。
「ヨユーぶってる岩倉さん、ぶっ壊してやろーかと思って」